不規則変光星






   朝のジョギング。
  
  
   玄関を開けた途端、目にしたモノは。

   見慣れた顔の見慣れない姿。
  
  

   いつもなら気配を察したコロマルが出迎えてくれるのだが、
   今日はそうもいかないらしい。
 
   ソファで眠る彼の膝に顎を乗せ、気持ち良さそうに寛いでいる。

   起こさないようそっと近づいてみると、閉じていた目から赤い色が覗き、
   こちらに視線を向けたかと思うと、挨拶のつもりだろう、ゆるりと尻尾を
   一度だけ動かす。

   それに頭を撫でる事で返すと、真田は未だ眠る彼へと視線を移す。




   黒威 彩貴。
 


 
   ………変な奴だと思う。

 
   最初に会った時は、正直、大丈夫なのかと不安もあったが、今では安心して
   背中を任せられる。
 

   まぁ、相変わらず何を考えているのかは分からないが。
 
 
   ふと、何となく顔にかかっている前髪が邪魔そうに思え、軽く払い除けてやると
   隠されていた白皙が覗く。

   決して女には見えないが、どちらかと言えば中性的で、同性の自分から見ても
   随分と整った顔立ちをしていると思う。

   加えて女子には優しいというのだから、騒がれるのも無理はないか。


   とは言え、すでに見慣れてしまっている自分には関係ないのだが。





   そう、見慣れている。   


   筈なのに。







 
   何かが物足りない。


    





   衝動のままに手を伸ばした、その瞬間。








   ゆっくりと、こちらを捉える瞳。













   あぁ、欲していたのはコレだったのだと。












「………真田、先輩…?」


   起きたてだからだろう、少し掠れ気味の声で呼ばれ我に返った真田は、
   その声の近さに思いの外、接近していた事に気付き、慌てて距離を取る。


「……あー…寝ちゃってたみたいですね…」

   
   明らかに不自然であっただろうに、気にした様子もなく軽く伸びをすると、
   嬉しそうに尻尾を振るコロマルの頭をゆっくりと撫でてやる黒威に、
   真田は努めて平静を装う。


「珍しいな。夜更かしでもしたのか?」
「えぇ…昨日、面白い本を見つけて、つい」
「そうか。程々にしておけよ」


   別に疚しい事などしていないというのに。

   一刻も早くこの場から立ち去りたくて適当に切り上げようとすると、
   背後から掛けられる声。

 
「そういう先輩こそ。程々にしておいて下さいね」


   何を言われるかと思えば。

   思いも掛けない内容に、真田は首を傾げる。


「…何がだ?」
「トレーニング。今日は随分と走り込んできたみたいだったから」
「いや、いつも通りだが…どうしてだ?」






「あ、いえ……顔が赤かったから」

「……ッ!」
 




   先程といい。

   どうも思っていた以上に自分は素直過ぎるらしい。





   内心で舌打ちをしていると、今度は黒威が首を傾げる。

 
「…先輩?もしかして具合でも悪いんですか?」
「いや、大丈夫だ」
「そうですか?なら良いんですけど…」


   気にしているのかいないのか、言い終わらない内に黒威はカウンターの
   奥へと向かう。


「あ、俺これから朝食作りますけど、先輩も食べますか?」



   その、あまりにも普段通りの態度に。

   意識している自分が何だか馬鹿らしくなってきて。


   真田は知らず詰めていた息を軽く吐き出すと、黒威を追い掛けていった
   コロマルの後へと続く。


「いいのか?」
「えぇ、一人分作るのも二人分作るのもそう変わらないですし」
「なら、貰おうか」
「どうぞ。あ、プロテインかけたりしないで下さいね」
「かけるかっ!」



   どこまで本気なのか。

   一瞬だけど、楽しそうに微笑むから。



   だから、ほら。




   今日もまた、彼のペース。









初真主。みたいなモノ。
難産でした…というか今も微妙に納得いってないのですが、これ以上は無理なのでUPしてみる(オイ)
私にしては珍しくシリアスで来れたかと思ったのですが、最後、耐えられませんでした(笑)
あ、ウチの主人公とコロマルは仲良しです。

                                                      written by 名葉