銃を持たない狩人






「Trick or treat!」




   ノックの音に出てみれば。

   呆れるくらいに満面の笑顔。






「……………で、何が欲しいの?」


   本当ならあのままドアを閉めてしまっても良かったんだが……というか、
   実際に一度、閉めたのだが、あまりにも騒ぐので仕方なく入れてやって
   今に至る。


   大体、女子の所ではなく真っ先に自分の所に来た辺り、確信犯なのは
   分かっていたのだが、一応、注文を聞いてやれば、待ってましたと
   言わんばかりに輝く瞳。


「よっしゃ!そうだな〜っ何がいっかな〜♪」
「あんまり面倒なのは駄目だから」
「えぇっ!?何でだよ?別にいいじゃねーか、彩貴、料理得意なんだし」
「そういう問題じゃないし。大体、得意なんじゃなくて、あれは必要に迫られて」
「あれだけ上手きゃ得意っつってもいいと思うけどな」
「とにかく、駄目なモノは駄目」


   ………折角、期待して来たのに。

   ちぇ!と、態とらしく舌打ちしてみせれば、何故か此方を見つめていて。
   その真剣な眼差しに口を噤めば、僅かに近付く距離。




「欲しいのはチョコ?飴?それとも…」








「……………俺?」






   一瞬、言われた意味が分からなくて。

   飲み込めた瞬間、真っ赤になる顔。



「は…はァァア!?なっ何言って…ッ!!」

「冗談だよ。はい、クッキー」



   さっきまでの雰囲気は何処へやら。

   まるで何事もなかったかのように差し出されるお菓子に、順平は脱力する。


「…………………………お前が言うと冗談に聞こえねーんだよ……」
「だって順平がお菓子くれなかったら悪戯しちゃうぞって言うから、
 てっきり悪戯したいのかと……」
「なんでそーなんだよっ!普通、逆だろ!!」





「…………………へぇ」





   自分としては至極、真っ当な事を言っただけの筈なのに、何故だか
   妙な間を取られ、順平は思わずたじろぐ。


「な…なんだよ……」
「……………いや、別に。あ、クッキー足りる?なんだったら、もっと
 持ってってもいいよ?」
「………………………お前さ、俺のことお菓子も買えない可哀相な子だって
 思ってねーか?しかもリクエスト聞いた割にクッキー用意してあるし……」
「そんな……心まで貧しくなっちゃ駄目だよ?」
「心までって、おもっきし思ってんじゃねーかッ!!」


   色々と突っ込み所はあれど、とりあえずは文句を言おうと口を開きかければ。





   押し込まれる、固形物。







「オマケ」







   ゆっくりと離れていく指を目で追って。

   辿り着いた先に見える笑顔に目を奪われて。





   口内に広がる甘さより、微かに触れた熱の方が甘いなんて。







「…………………どうかしてる………」






「え?何か言った?」
「な、何でもねーよ!」
「ふーん。あ、そのチョコも一応、手作りだから」
「………サンキュ」
「どういたしまして」





   甘いのは。

   お菓子でも君でもなくて。




   俺のココロの箍。









初順主。
ハロウィン用だったのですが、微妙に間に合わな…ゲフゲフ!!
まぁ、アレです。ゲームの中の10/31だと思って下さい(うわぁ)

                                                      written by 名葉